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ささきクリニック 内科・循環器科
兵庫県尼崎市西大物町12-41 アマゴッタ4階医療センター
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遺伝と高血圧症
  米国のデータで,高血圧症になりやすい集団として以下のような集団をあげています.

1. 両親・兄弟に高血圧症がいる
2. アフリカ系米国人(黒人)
3. 運動不足
4. 塩分・アルコール・カロリーの摂取過剰

1.2.が遺伝などご自身で修正不可能なものであり,3.4.がご自身で修正可能な生活習慣にまつわるものです.でも皆さんが「・・・?」と感じるのは2.ではないでしょうか? この「・・・?」から遺伝と高血圧症の話を広げてみたいと思います.
体内から塩分が喪失することは人間にとって一大事(とくに暑い地域では)です.そこで暑い地域(アフリカや太平洋・東南アジアなど熱帯地方)に暮らしてきた人々は塩分を体内に保つ遺伝子を持つ集団が生き残ってきました.暑い地域では塩分を体内に保つ遺伝子を持たない集団は淘汰されてきたのです.塩分を体内に保つ遺伝子を持たない集団は,寒い地域(北欧や北アジアなど高緯度地方)で生き残ることになります.
この二つの遺伝子を持つ集団が時代も場所も違う縄文弥生時代の日本と近世の米国で出会います.日本の場合は人為的なものではなく,自然発生的なものでしたが,米国の場合は移住という人為的な形で.
米国の移住というのはイメージしやすいのですが,日本の場合を簡単に(歴史の専門の方からは,おおざっぱ過ぎるとお叱りをうけそうですが・・・)説明します.数万年前,当初,日本列島に住み着くようなったのは黒潮にのってやってきた太平洋・東南アジア系の人々で縄文人と呼ばれます.その後,朝鮮半島から南下してきて日本列島に住み着く人々が現れます.北アジア系の人々で弥生人と呼ばれます.



「南」出身  縄文人    塩分を体内に保つ遺伝子を持つ人々
「北」出身  弥生人    塩分を体外に保つ遺伝子を持たない人々

縄文人が塩分を体内に保つ遺伝子を持っていたと考えられています.当初は縄文人と弥生人の間でイサカイもあったようですが,やがて共存→混血も進んでいきます.したがって,縄文人の血(遺伝子)は弥生人によって薄められたとはいえ,日本人は塩分を体内に保つ遺伝子を持つ人が多い民族といえるでしょう.
日本の環境は縄文人の故郷である太平洋・東南アジア地域と比較すると,寒い地域となり,塩分を体内に保つ遺伝子を持つことが裏目にでます.汗はそれほどかかないし,体内に塩分をためこむ一方となり,この塩分に反応して血圧が上昇するのです.これを食塩感受性高血圧といいます.最近は夏もエアコンが快適な環境を提供してくれるので,食塩感受性高血圧は増え続けています.



「塩分を体内に保つ遺伝子を持つ熱帯の人種」「北アメリカはアフリカより寒い」「先進国→エアコン普及で快適な夏」など,米国におけるアフリカ系住民(黒人)の高血圧症も日本の縄文遺伝子を持つ人の高血圧症とほぼ同じ事情なのです.

【補足】
暑い地域で塩分を体内に保つ遺伝子を持たない集団が淘汰されてきたのと同様,塩分を体内に保つ遺伝子を持つ集団は,寒い地域では高血圧症→心臓・血管の病気のため,淘汰されたと考えられています.
心療内科と循環器科の境界線
  おもに高血圧や不整脈の診療にたずさわっているのですが,これらの疾患は「こころ」の問題に影響を強く受けるということから,必然的に心療内科での治療に準じたような対応をしていくことも多くなります.なぜ,「こころ」の問題にこれら高血圧や不整脈が影響を受けるかというと,「こころ」の問題は自律神経に関係し,自律神経は心臓や血管に関係するからです.心臓には「こころ」という文字が当てられているのですが,自律神経の存在,ましてやその働きなど判明していなかった大昔から,われわれの祖先も感覚で「こころ」と心臓の関係を知っていたのかも知れません.英語でも「こころ→heart」「心臓→heart」であるのは興味深いところです.



次に,簡単ではありますが,自律神経が心臓や血管に及ぼす影響について案内してみます.自律神経は交感神経と迷走神経の二つの神経で構成されています.交感神経は心臓・血管に対して「アクセル」,迷走神経は心臓・血管に対して「ブレーキ」として作用します.つまり,血圧や脈拍数は交感神経と迷走神経によって「アクセル」や「ブレーキ」が働いて,適切な数値に維持されているのです.具体例として,血圧・脈拍数が下がりすぎると交感神経が反応することで,また逆に血圧・脈拍数が上がりすぎると迷走神経が反応することで,適切な状態に維持します.



ストレスが強くかかっている高血圧の患者さんは通常使用する血圧を下げる薬(降圧剤と呼びます)だけでは,血圧が下がらないことがあります.それは自律神経のバランスが崩れて,血圧が上がっているにも関わらず,交感神経が強くはたらくことによって起こる現象です.ストレスは交感神経と深く関係しています.この場合,抗不安薬を内服していただくことで,血圧が落ち着いてきます.
不整脈(動悸)も同じように考えていきます.ただ不整脈には2種類ありますので少し事情が違います.2種類の不整脈というのは「@脈が速くなる頻脈性不整脈」と「A脈が遅くなる徐脈性不整脈」です.頻脈性不整脈は交感神経が強くはたらくと悪化しますし,徐脈性不整脈は迷走神経が強くはたらくと悪化します.頻脈性不整脈の場合,血圧の治療と同じように不整脈をおさえる薬(抗不整脈剤と呼びます)だけではなく,抗不安薬を内服していただくことで不整脈発作の回数が減ります.
抗不安薬は心療内科でよく処方される薬なのですが,われわれ循環器内科医にとっても,高血圧の患者さんや不整脈(動悸)の患者さんによく内服をおすすめする薬です.依存性などを心配される患者さんもいらっしゃるのですが,現在は依存性の少ないタイプもあり,安全に内服していただけると考えています.
この文章が胸の不快感や動悸があって,「心療内科を受診しようか?」「循環器科を受診しようか?」と迷っていらっしゃる患者さんの選択肢決定の一助になれば,さいわいです.循環器専門医として意見を述べますと,胸の不快感や動悸がある場合,循環器疾患は脳こうそくや心筋こうそくをはじめ,重篤な合併症を引き起こす可能性もありますから,まずは循環器科を受診されることが望ましいと考えます.
厚生労働省から日本脳炎ワクチン接種中止勧告
もともとワクチン接種後には極少ない(数百万人に一人というくらいの)確率ですが、強い副作用があります。接種した局所がシコリになったりとか、微熱がでたりとか、の弱い副作用は頻繁ですが、ここでいう強い副作用は急性散在性脳脊髄炎(ADEM)とよばれるものです。急性散在性脳脊髄炎はほかのワクチン接種でもおこる病気ですし、ワクチン接種が関係しない場合のほうが多いくらいです。今回の中止は日本脳炎に感染する患者さん、日本脳炎ワクチン接種が原因の急性散在性脳脊 髄炎にかかる患者さんの数が同数に近くなってしまったことによります。ワクチンの 製造方法を適切に改善して、急性散在性脳脊髄炎にかかる可能性を小さくした段階でワクチン接種が再開されるものと考えます。(数ヶ月は要するでしょう)

急性散在性脳脊髄炎→頭痛、発熱、嘔吐で発症し、意識障害、痙攣、麻痺へと進展し、肺炎などで死亡することもあります。死亡率の報告はまちまちで20から50%くらいです。回復した場合でも、麻痺などの後遺症が死亡にい たらなかった患者さんの25から50%に残るといわれています。
当クリニックとしては予防接種は尼崎市からの委託業務であるため、尼崎市からの指示があるまでしばらくみあわせることになります。中止勧告にもかかわらず、実施が奨められる条件は、日本脳炎に感染する可能性の大きい地域住民ということですが、尼崎西大物近隣は可能性は大きいとは言えないと考えます。といいますのは、蚊(カ)に刺されることで日本脳炎は感染することはご存知の方も多いでしょうが、その前に増殖宿主としてブタが介在します。増殖宿主であるブタを刺した後の蚊が人間を刺すことで感染が成立するのです。養豚場などの施設がある地域の方は急性散在性脳脊髄炎のリスクを背負いながらも予防接種を受けるべきなのでしょうが、(佐々木の個人的意見ですが、)当地ではじゅうぶん検討のうえで接種を決定して いけばいいと思います。

余談ですが、蚊が媒介する病気として、日本脳炎・デング熱・西ナイル熱・・・いろいろありますが、いちばん知られているのはマラリアではないでしょうか?そのマラリア・・・明治時代くらいまでは日本の蚊からも人間に感染していたというのはご存知でしょうか?日本は公衆衛生的施策を適切に実施していった結果、国内からのマラリア撲滅に成功しました。ゴミのポイ捨て・指定曜日以外のゴミ出しなどモラルの低下が日本の公衆衛生レベルの低下につながり、ふたたび悪い病気が流行する時代 を迎えることがないよう、みんなで小さな事柄から気をつけていきましょう。

最後に日本脳炎予防接種中止にともなう対策ですが、日本脳炎は蚊が媒介することがはっきりしているので、蚊取り線香・蚊取りマット・虫除けスプレーなどでこの夏は蚊に刺されるのを防いでいくことで日本脳炎の予防対策としましょう。
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