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シロスタゾール

NHKスペシャル(2014/7/20放送分)を視聴したのですが、あたかもシロスタゾールで認知症が治るみたいな言い方でしたねぇ。このままではきっと皆さんが勘違いする!と思い、早速ネットで検索。おそらくこれがネタなんだろうという報告を見つけました。
出演(?)していた先生とこの文献の著者も一致するし、間違いないかと思います。この文献の内容を要約してみると、ドネペジル(アリセプト)を内服していた患者さんとドネペジル(アリセプト)+シロスタゾール(プレタール)を内服していた患者さんの認知症症状のすすみ方を比較してみたら、ドネペジル+シロスタゾールを内服していた患者さんのほうが症状のすすみ方がゆるやかだった、という内容です。しかも認知症の中等症以上では認められず、初期の患者さんで認められるのみとのこと。
認知症が改善した、治癒した、じゃなくて、認知症症状のすすみ方がゆっくりだった、しかも初期の患者さんで、という結論ですから、落ち着いてくださいね。落ち着いてほしい理由をあとひとつ。
後ろ向き研究であったことです。後ろ向き研究というのは診療録をパラパラとめくっていたら、「ドネペジル+シロスタゾールの組み合わせて内服していた患者さんの成績が良いやんか。」というのを見つけました、という研究です。ドネペジルは認知症に処方する薬剤ですから、処方目的はわかりますが、問題はシロスタゾールです。シロスタゾールは、今のところ、認知症に適応はありませんから、別の目的で処方していたはずです。シロスタゾールの適応症は(シロスタゾールを処方することが認められている病気は)慢性動脈閉塞症と脳梗塞発症後の再発抑制ですから、このような疾病を認知症とあわせ持つ患者さんだったことでしょう。報告の考察でも著者は、血管がつまるなどの疾病が影響している可能性を述べています。精度の高い議論のためには、血管がつまるなどの疾病を持たない認知症の患者さんにシロスタゾールを処方するというような試験の結果を待つべきでしょう。
またシロスタゾールは我々循環器内科医がよく使用する薬剤ですから、その特性をよく理解しているのですが、頻脈(脈が早くなる状態)を数多く経験します。「脈が速くてしんどいんです。不整脈です。」と当診療所を受診となった患者さんがほかの医療機関でシロスタゾールを処方されていたなんてこともありました。この放送がきっかけで同じようなことで外来受診される患者さんが増えないか、心配です。

NHKスペシャルはこちら)

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